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あらびきZONE

カメラとMacと競馬を愛する大学生の不定期雑ブログ

今更だけど改めてサマーウォーズを見ての感想

サマーウォーズ

細田守監督映画の第2作目.昨年も細田監督の最新作「バケモノの子」の公開に合わせて金曜ロードショーで放送された.

なんで今更サマーウォーズの感想を書くかっていうと,ある人のサマーウォーズ(含む細田作品)ってこう見ると面白いよ!って話を聞いて改めて見直してみたらこれまで「面白い」だった感想が「なにこれありえない感動した!!!(←)」とまあ大げさだけどかなり印象が変わったので覚書程度にその話を含めて書こうと思った.

 

サマーウォーズのあらすじ

OZ(オズ)というSNSで買い物からゲームから公的手続きなど様々なサービスを受けられ,企業の業務システムまでそのアカウントシステムを導入しているという世界.数学が得意な主人公・小磯 健二(こいそ けんじ)は同じ学校の先輩である篠原 夏希(しのはら なつき)に「バイト」という名目で実家に誘われる.夏希の実家では夏希の曽祖母・陣内 栄(じんのうち さかえ)の90歳の誕生日を祝うために親族が集まっており,健二はそこで夏希に頼まれ婚約者のふりをすることとなる.
その夜,健二がケータイに届いた謎のメールを何かの問題と思って解くと,翌日にはOZのシステムがハッキングされていた.昨夜健二の元に届いたメールはOZのシステム権限の暗号パスであった.システムをハッキングされたOZは現実世界とリンクして人々の生活に混乱を引き起こすこととなってしまう.

 

細田映画の軸

サマーウォーズ」をはじめとした細田守監督の映画「時をかける少女」,「おおかみこどもの雨と雪」について軽く触れる.細田監督は2005年に東映アニメから独立後,2006年に「時をかける少女」を監督し高い評価を得た.小規模のシアターで公開した作品で発表当初上映館は全国で21館だったが,インターネットなどで評判を呼び,最終的に延べ100館以上の劇場で公開された.その3年後,初の長編オリジナル作品として「サマーウォーズ」を公開.4ヶ月の興行で観客動員数は123万人を超えた.さらに2012年に「おおかみこどもの雨と雪」を公開.親子をテーマとしたこの作品は興行収入は42.2億円となった.この細田3作品はそれぞれSFやファンタジーの要素が含まれており,それと絡めた親子や家族,友人愛というものが高く評価されている.

しかし,細田3作品には一貫して,全ての作品で共通に軸となっているものがある.それは,「主人公の成長」だ.細田作品では物語を通して主人公の成長が描かれているのだ.しかもそれが表立っているのではなく,登場人物のさりげないセリフ回しで描かれているのが魅力なのだ.

 

サマーウォーズの見方

なぜ主人公の成長が描かれていると考えるのか.鍵となるポイントが2つある.

一つ目.

「よろしくお願いしまぁぁす!」

健二がクライマックスで叫ぶ有名なセリフだ.CMでも使われるカットなので馴染みが深い.

では,なぜこれが「よろしくお願いします」なのか?

ネタバレになるが,これはクライマックスで敵が残した最後の脅威をなんとかする時に叫ぶセリフなのだ.つまりは戦いを締める必殺技のようなタイミングであり,その流れだけならばもっと勢いのあるセリフや「うおおおおお!!」とか「いっけえええ!!」とかの方が合いそうである.

気弱な主人公が神頼み的な願いを込めて放ったセリフであるという見解も聞くが,それならば「お願いしまーす!」や「頼む!!」の方が合う.「よろしく」はいらないのではないだろうか.逆に言えば,なぜ「よろしく」でなければならないのか.

実はこのセリフ,作中で2度登場しているのだ.クライマックスのシーンから1時間半ほど前の健二が夏希に家族を紹介されて挨拶するシーンで「よろしくお願いします」が一度使われている.ここに重要なつながりがある.

健二は作中でも語っているが家族というものに憧れている.離れて暮らしている父親の存在から,夏希に連れられてであった陣内家の親族の明るさに素直に好感を抱いた.

健二は家族に憧れるが自分がこの陣内家の一員には加われないとも思っている.それは夏希の栄おばあちゃんから花札に誘われた時の場面で現れている.夏希をもらってやってくれと頼まれた健二は一度何かを言い淀み,自信がないと言う.それでも背中を押す栄おばあちゃんだが,また健二は喉元まで出かかった言葉を飲み込んでしまう.

ここで健二は「よろしくお願いします」を言いたかったんじゃないだろうか.しかし健二はこの家に来てからまだ何もしていない.OZ騒動の中でも混乱を招いただけ.自分はまだこの家族の中で何物でもない,という思いが強くあったと考える.

二つ目.

クライマックスのシーンで健二は逃げないことを選択する.手の打ちようがない状況で,おそらく誰にも責められないであろうに健二は身を挺して家族の大切なものを守ることを決意する.

なぜなのか?

「主人公がほぼ空気だったから無理矢理見せ場を作った」なんて考えは愚かである.これは主人公の成長を描くのに欠かすとこのできない場面だ.しかし,誰にも責められなく,あとは逃げて被害を少なくすれば十分という場面でなぜ健二は残り,戦うことを決心したのか.

健二が栄おばあちゃんと最初に対面した時,婚約者という体で夏希から紹介された.その時,品定めをするように厳しい顔つきで,婚約者ならば命をかけて守れるかと問われた.この時,健二は気圧されて承諾してしまうが,これが最後につながってくる.

健二は何者かになろうとしたのだ.何者でもない自分がこの家族に憧れ,そして迎え入れてくれた.しかし,自分は何者でもない.だからあの時逃げずに家を守ろうとしたのだ.そしてあの時言えなかった言葉を言う.

 

命をかけてこの家を守ります,だから僕を家族として迎え入れてください!

「よろしくお願いしまぁぁす!」

 

気弱な少年が家族に憧れ,到底無理だと思いながらも家族の絆の強さに触れ,命を賭ける覚悟をして大切な人を守る決心をした成長譚なのだ.主人公は鼻血出すだけの映画じゃない.