あらびきZONE

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バケモノの子を見た感想

細田守監督の第4作目,2015年の夏に公開された話題作が早くも地上波に登場した.今回は2016年7月22日の金曜ロードショーで放送された「バケモノの子」(本編ノーカット)について語る.

まず言いたいのは,私が細田守監督のファンであるということだ.「時かけ」も「サマウォ」も「おおかみこども」も見た.それだけでファンを名乗るのもおこがましいがデジモンの初代21話とか劇場版も好きなのでとりあえずファンということでいいだろ,自称なんだから.

 

さて,そんな細田守ファンの私が今回「バケモノの子」を見た感想はというと,ズバリ,期待はずれであった.

 

とは言ってもここにひたすらdisりに来たわけではない.少しずつ感想を述べて行く.

 

率直に作品が全体的に稚拙だった.全体的と言ってももちろん良い部分もあった.しかし,物語の序盤から特に登場人物のセリフまわしに違和感のようなものを感じた.言うなれば,「しゃべりすぎ」感.例えば,九太が渋天街に最初に迷い込んだ際に,直前に通って来た路地が壁になって塞がっていたシーンで「今まで来た道が壁に!」とか喋ってしまうとこ.それもう画面上で表現してるよねって.そんな,それ言う必要ある? というセリフが今回は多かった.

これはセリフの密度の話なので別に間違ったことを言っているわけではないので関係ないといえばないのだが,今までの映画で感じた絶妙なセリフまわしからくる雰囲気が好きだった身としてはこれは衝撃とも言えるレベルで驚いた.

しかしそれを考えても九太が熊徹と出会ってから成長するまでの少年編は良い話だった.両親を亡くし一人ぼっちの九太が同じく天涯孤独でありながら強く生きようとする熊徹にひかれる流れから弟子入りし絆を深めていく様は感動ものだ.

そして物語は後半,九太が整調性17歳になった青年編へと移る.ここでヒロイン役となる女子高生の楓と出会うのだが,ここで細田守節が炸裂する.そう,逆ナンだ.サマウォのなつき先輩しかり,おおかみこどもの花しかり,細田守監督は童貞の願いを叶えるような逆ナン系ヒロインを登場させるのだ.

とまあ,こんなくだらないことも感じたが,物語は着実に進む.いきなり出てくる父親,いきなり始まる超能力バトル,いきなり穴が現れる.正直「そういうんならそうなのかわかった」と深く考えずにいないと見ていられない展開だ.

 

ストーリーを追いすぎてネタバレするのもあれなのでふんわりとまとめるが,今回強く感じたのは,良くも悪くも万人向けになったということ.

前3作よりもエンタメ色は強くなり,ファンタジー設定に修行・決闘・勝利と誰が見ても外さないなという方向性になっている.メイン二人の関係性から見える親子愛見たいなテーマもわかりやすくて良い.

しかし,先述した通り内容としては稚拙になっている.わかりやすい伏線,説明口調,少年漫画ばりのバトル.今までの作品とは毛色がまったく違っている.エンタメ作品としてこれを見るならいいんだろうけど,物語の作り込みとか構成力とかそういう点で作品評価をすると太刀打ちできないだろう.

これは何事かと思い作品クレジットを確認すると,今まで脚本を担当していた奥寺さんが「脚本協力」として関わっていた.メインは細田守監督.今までの何気ないセリフのつながりや絶妙な行間で見せた作品の魅力は奥寺さんの功績が大きいのかもしれない.

ということで,前3作の脚本のように魅力的なセリフまわしからくる細田守監督のテーマ性と綿密に作り込まれた映像や世界観が織りなす絶妙な相乗効果を期待していたが今回はその期待は外れてしまった.

しかし,今回は万人向け,ファミリー層をも狙った作品でありその力の入れようは凄まじかった.特に映像に関してはいつまでも見続けていたと思うくらい素敵な仕上がりだ.伊達に興行成績あげてないよ.

バケモノの子」自体は期待していたほどではなかったが,細田守監督の作品作りへのスタンスが変わったことを思えば,新たな引き出しが出たとも取れるし,今までの深い作品が刺さらなかった層へ向けた細田守監督なりのリベンジとも思える.

細田守監督の今後の作品への期待は膨らむばかりである.