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あらびきZONE

カメラとMacと競馬を愛する大学生の不定期雑ブログ

いいから『響〜小説家になる方法〜』を読め!

漫画 いいから読め

『響〜小説家になる方法〜』とは

はじめに言っておくが,この漫画は小説家になるための小説の書き方ハウツー漫画でも,文学業界あるあるネタ漫画でもない.才能あふれる主人公の女子高生・響が小説家を目指し,その道を歩んでいく物語だ.

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響〜小説家になる方法〜第2巻より

 

あらすじ

とある文芸編集部の新人賞宛に送りつけられた、直筆の投稿原稿。
編集部員の花井は、応募条件を満たさず、
ゴミ箱に捨てられていたその原稿を偶然見つける。
封を開けると、これまで出会ったことのない
革新的な内容の小説であった。
作者の名は、鮎喰響。連絡先は書いていない・・・

響〜小説家になる方法〜第1巻より

 この作品は響という天才的な才能を持った文学少女が純文学の世界に革命を起こしていくお話である.

 

純文学とは

純文学とは,大衆文学と呼ばれる一般層をメインターゲットとした小説とは対称にある純粋な文学による芸術表現を目指した作品などのこと.主に売れればいいという大衆文学が基本的な起承転結の構成に忠実なのに対し,純文学は起承転結がなくとも良い(起承転結がないのが純文学というわけではない).文章によって人の死生観,世界観や様々な価値観を描き,その美しさを表現する.

明治大正昭和にかけて大衆の娯楽の一部となっていたが,コンテンツ過多な現代においては業界全体が下火であり.厳しい景気となっている.

 

登場人物

主人公.15歳の女子高校生.小説が好きで月に20〜30冊の小説を読んでいる.天才的な文学の才能を持つが,それに自分では気づいていない.一般とは懸け離れた人生観を持つためか時折常軌を逸した行動を起こすことがある.寡黙で人付き合いが少ないのと,前述の奇行から人間的な感性すら疑われるが照れも恥もする普通の(?)女子高生.高校入学後,文芸部に入った.高校入学前の春休みに小説を執筆し,文芸誌の新人賞に応募していた.

 

涼太郎

響の幼馴染の男.響と同じ高校に通い,クラスも一緒.響のことが好き.実家の喫茶店でバイトをしており,料理の腕前は確かなもの.イケメンで高身長でスポーツ万能なのでかなりモテる.しかし,病的なまでに響のことを好いている.響と同じ文芸部に入部した.

 

リカ

文芸部で響たちの先輩.2年生.見た目はギャルだが非常に頭がキれ,気がきく.他人のことを客観的に評価することに長けている.軽口だが,決して頭が悪いわけではなくムードメーカーの役目を買って出ている節がある.むしろ幼い頃から国語の成績は群を抜いて秀でており,純文学にも興味があった.小説家を目指している.

 

タカヤ

文芸部にたむろしていた不良.入部希望で部室に来た響たちといざこざを起こし文芸部から離れたが,後に響に説得され文芸部に入部した.

 

カヨコ

響たちと同じクラスの女子.高校デビューを目指して茶髪にし,眼鏡からコンタクトに変えたが,本質的なコミュニケーション能力までは変えられずクラスでも浮く存在となっていた.図書館で一人でいるところを響たちにスカウトされ,文芸部に入部した.

 

主人公響のすごいところ

何と言ってもその天才的な才能.響の小説を読んだ人が悉くその才能に衝撃を受け,感動していく.はっきり言ってその響の無双っぷり,痛快さを見るのもこの漫画の一つの楽しみだ.しかし,響自身はその才能を自覚できていない.

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響〜小説家になる方法〜第3巻より 

響が小説を執筆したのは自身の価値観を確認するため.新人賞に応募していたが,そこから小説家になることを志していたわけではなかった.(そのため,応募時に連絡先すら添付していなかった.)

純文学とはつまりは芸術的な側面を持つわけで,それを自分で評価するのは難しい.そのため響は他人に評価をもらおうと考えたわけだが,ここまでは普通の文学少女.しかし.読んだ人間が片っ端からその作品に感動し,一瞬で篭絡してしまう才能を持っているのだから驚きだ.

 

しかしそういう天才には一つ二つ欠点もある.不良の小指を折ったり.

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 響〜小説家になる方法〜第1巻より

屋上から飛び降りたり.

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響〜小説家になる方法〜第1巻より

小説家の顔面を蹴ったり.

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響〜小説家になる方法〜第2巻より

そんなお茶目な一面があるわけですね.(やばいだろ...)

でもこれも天才的な感性を持つ響だからこそなし得ることなのです.以下は上の顔面キックの手前から抜粋したシーン.先輩であり友人である凛夏をけなされていたからの行動だったんですね,納得.(それでもそこまでしないだろ...)

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響〜小説家になる方法〜第2巻より

 

リカという存在

このように奇行が目立つが圧倒的天才の響だが,それと対照的な存在が上にも登場したリカである.一言で表すならば「秀才」.しかも努力のそぶりを見せないタイプ.日本人離れした見た目から色眼鏡で見られることも多かったであろう彼女が獲得したのは卓越したコミュニケーションスキルと文学に対する情熱.相手の行動原理や考えを客観的に捉え,主観を交えずに慎重に明るく対応することができる.

リカも小説家を目指し,作品を書いていた.実際響に出会わなければこの才能は日の目を浴びることになっていたでしょう.しかし,響という突出した才能のおかげで,世間の目も,彼女自身も,その可能性を見出せなくなってしまった.

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響〜小説家になる方法〜第3巻より

おそらく少なからずあった彼女の自信は,圧倒的才能を目の前にした時,一瞬で崩れ去ってしまったのです.

このように響の作品を読んだ小説家・文学界の人間は自身の人生を見つめ直してしまうほどの衝撃を受けてしまう.ある者は今の自分を嘆き,ある者は己の小ささを知り,ある者は率直に感動し,ある者は新しい道を歩み始める.読んだ人の人生を変えるような力が響の作品にはあるのだ.

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響〜小説家になる方法〜第2巻より

その才能が目の前に現れたリカ.芸術性が求められる純文学において,誰もが認める響の小説は,彼女に大きな影響を与えた.

それでも彼女が選んだのは.小説家の道だった.数字で優劣がつくものでもない.誰が認めたから勝ちというわけでもない.ただ,自身の感性を信じてくれる人を求めて.

 

既刊情報

2016年9月現在既刊4巻

響〜小説家になる方法〜(ビッグコミックス) 著:柳本光晴